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2026-09-22 · 季節・産地 公式

新そばは秋だけじゃない。収穫時期と「三たて」を知る、蕎麦の旬の話

読みもの

「新そば、始まりました」。秋の蕎麦屋でこの貼り紙を見ると、つい注文したくなります。でも、夏にも同じ文字を見かけることがあります。去年の蕎麦なのかと思ったら、本当にその年に収穫した新しい蕎麦。いったいどういうことでしょう。

蕎麦の旬は一度きりではなく、産地や栽培の時期によってずれます。新そばを少し詳しく知ると、秋を待つ以外にも食べる楽しみが増えてきます。

新そばと「打ちたて」は、別の新しさ

新そばは、新しく収穫した蕎麦の実を使ったものです。一方、打ちたては麺を打ってからの時間、茹でたては茹でてからの時間を表します。

たとえば、保存していた前年産の実を今日挽き、今日打って、注文後に茹でた蕎麦は、挽きたて・打ちたて・茹でたてでも、新そばとは別です。逆に、新しい実でも、製粉後や調理後の扱いがよくなければ、そのよさを十分には楽しめません。

蕎麦の「三たて」は、一般に挽きたて、打ちたて、茹でたてのこと。畑でいつ収穫したかと、厨房でいつ作ったかは、分けて考えると分かりやすくなります。

夏にも収穫できる、育つのが早い作物

蕎麦は、種をまいてからおよそ二〜三か月で収穫できる、生育期間の短い作物です。春にまいて夏に収穫する作り方も、夏にまいて秋に収穫する作り方もあります。

夏の新そばを「夏新」、秋のものを「秋新」と呼ぶことがあります。夏新は前年の残りを呼び替えたものではなく、夏に収穫した新しい実を使った蕎麦です。

ただ、どの地域でも同じ畑から年に二回収穫しているわけではありません。気温や霜、雨などの条件に合わせ、地域に適した品種や栽培時期を選びます。短期間で育つといっても、いつ種をまいてもよいわけではないんですね。

新そばの時期は、産地ごとに違う

北海道と本州では種をまく時期も収穫の時期も違います。同じ県でも標高や栽培方法、その年の天候によってずれるため、「新そばは毎年この日から」とは決められません。

お店の所在地と、使っている蕎麦の産地も別です。宮城のお店が北海道産の新そばを先に出し、あとから別の産地へ切り替えることもあり得ます。「近所の二軒なのに、始まる日が違う」のは不思議なことではありません。

さらに、収穫した実はそのまますぐ麺になるのではなく、乾燥や調製、製粉などを経ます。畑での収穫日と、お店の提供開始日にも間があります。

新しい実なら、どれも同じ香りなの?

新そばは新しい実の香りや風味を楽しめるのが魅力ですが、品種、産地、収穫や保存の方法でも味わいは変わります。すべての新そばが、強く香る濃い味の蕎麦になるわけではありません。

実のどの部分を使うか、粉をどのくらい細かく挽くかでも変わります。更科系の白い蕎麦と、外側寄りの部分を多く含む蕎麦を比べて「新そばらしさ」を一つに決めるのは難しいところです。

比べるなら、いつも通っている店で、同じ種類の蕎麦を頼んでみるのがおすすめです。麺の太さやつゆが大きく変わらないぶん、粉の違いに気づきやすくなります。もちろん、はっきり分からない日があっても構いません。

収穫直後だけが、おいしい時期とは限らない

「新そばがよい」と聞くと、それ以外の季節は妥協のように感じるかもしれません。でも、保存や製粉の工夫によって、蕎麦は一年を通して楽しめます。

山形などには、寒い時期の水に実を浸し、寒風で乾燥させる「寒晒しそば」の文化もあります。収穫直後の新しさとは別に、手をかけた原料の味を楽しむ方法です。単に古くなった蕎麦という意味ではありません。

新そばを食べに行くときは、「いつ始まるか」に加えて「どこの実か」「どんな粉か」も見てみましょう。店の案内に産地や品種があったら、写真や短いメモに残しておくと、翌年の食べ比べがしやすくなります。

旬を知る楽しさは、正しい月を暗記することより、「今、このお店で食べられるのはどんな蕎麦だろう」と気になること。夏にも秋にも、お店を訪ねる理由ができるのはうれしいですね。

— 記・蕎麦乃助
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